COVID19医療翻訳チーム(covid19-jpn.com)

有志医療者による海外論文の翻訳、医療情報

WHO_COVID-19に対する個人防護具の合理的な使用と深刻な不足時の考慮事項 暫定ガイダンス

翻訳日:2020/04/20  

* COVID-19対策ハートチーム による翻訳をご提供頂きました

原文: Rational use of personal protective equipment for coronavirus disease (COVID-19) and considerations during severe shortages

図1. 個人用防護具(PPE)の利用を最適化するための戦略

表1. 場所、対象者、活動の種類に応じたCOVID-19アウトブレイク時に推奨されるPPE a  (ページ後半に表は記載しています)

表2. 個人用保護具(PPE)不足による一時的な対策の選択肢:使用延長、再処理、代替PPEの使用

付録1:医療用マスクと呼吸用防護具の再処理方法に関する研究 

本文

背景

この文書は、医療機関および在宅医療における、個人防護具(以下、PPEと表記)の合理的な使用および荷役(貨物の取り扱い)に関するWHOの推奨事項をまとめたものです。また、昨今のグローバルサプライチェーンの混乱とPPEの深刻な不足に対する意思決定に関する考慮事項を評価します。

この文章には、一般コミュニティのメンバーに向けた推奨事項は含まれていません。詳細についてはこちら(一般コミュニティにおけるマスク使用に関するWHOのアドバイス)を参照してください。

本文では、PPEに以下を含みます:手袋、医療用/外科用フェイスマスク(以降、医療用マスクと表記)、ゴーグル、フェイスシールド、ガウン、エプロン、および特定のフィルター付きフェイスピースマスク(N95、FFP2またはFFP3基準、またはそれに準ずるもの)(以下、呼吸用防護具と表記)。この文章は、PPEの配布と管理に携わる人々、およびPPEの使用と優先順位付けに関わる公衆衛生当局ならびに医療関係者を対象としています。ここでは、荷役を含めて、PPEの最も適切な使用時期に関する情報を提供します。

この文書は、PPEの深刻な不足時の意思決定プロセスに関する重要な考慮事項に対処するために更新されています。

COVID-19の予防策

現在のエビデンスによると、COVID-19ウイルスは、濃厚接触と飛沫を介して人々の間で伝播します。空気感染はエアロゾルの発生する処置および補助療法の最中に発生する場合があります(例:気管挿管、非侵襲的換気、気管切開、心肺蘇生、挿管前の手動換気、気管支鏡検査)1。したがって、WHOはこれらの処置に対して空気予防策を推奨します。

すべての状況において、最も効果的な予防策には以下が含まれる。

  • 他者との物理的な距離(最低1メートル)をとる。
  • 手が汚れている場合は手指消毒を頻回に行い、見た目に手きれいであり擦式アルコール製剤が使用できる場合はアルコールで手指消毒を頻回に行う。
  • 目、鼻、口に触れないようする。
  • 咳エチケットとして、肘の内側やティッシュに咳やくしゃみを行い、ティッシュはすぐに処分する。
  • 呼吸器症状がある場合は医療用マスクを着用し、マスクを処分した後に手指衛生を行う。
  • 環境および人々が頻繁に触れる場所の定期的な洗浄と消毒。

医療環境における、COVID-19に対する主な感染予防と制御(以下、IPCと表記)のための戦略には以下が含まれる
2

  1. トリアージ、早期認識、および感染源の管理(COVID-19が疑われるまたは確認された患者の隔離)を確実にする。
  2. すべての患者に、入念な手指衛生を含む、標準予防策 3を適用する。
  3. COVID-19が疑われるまたは確認された患者に対して、経験的追加予防策を行う(飛沫および接触予防策、およびエアロゾルの発生する処置および補助療法に該当する場合の空気予防策)。
  4. 管理コントロール(administrative
    controls)の実装
  5. 環境および工学的コントロールの利用 4

標準予防策は、血液およびその他の病原体が伝播するリスクを減らすことを目的としています。これらは、すべての患者ケアに用いられる基本的かつ最低限の感染防止対策です。

医療従事者は自分自身を保護し、医療現場での感染を防ぐために、追加の感染予防策が必要です。 COVID-19の患者のケアを行う医療従事者は、いかなる時も接触と飛沫の予防策を実行する必要があります。エアロゾル発生手順および支援治療には、空中予防策を適用する必要があります。エアロゾルの発生する処置および補助療法に対しては空気予防策を適応します。

PPEの使用は最も見た目に理解しやすい感染拡大防止策ですが、これはIPC対策の1つにすぎず、主要な予防戦略として信頼すべきではありません。効果的な管理コントロールおよび工学的コントロールが無い場合にPPEの利点は限られています(医療におけるWHOの感染防止と流行性およびパンデミックが発生しやすい急性呼吸器感染症の制御で説明されています)。これらのコントロールを以下にまとめて示す。

  • 管理コントロール(administrative controls)には、医療スタッフの訓練と、以下に挙げるようなIPCのためのリソースの確保が含まれます:適切なインフラストラクチャ、明確なIPCポリシーの開発、適切な臨床検査へのアクセス、適切なトリアージおよび患者の配置(呼吸器症状を持つ患者専用に対する個別の待機エリア/部屋)、医療スタッフと患者との適切な比率。COVID-19の場合、可能な限り、 COVID-19が疑われるまたは確認された患者と他の患者との混合を最小限に抑えるために、明確に区別された治療経路の確立を考慮する必要がある(たとえば、別の医療施設、病棟、待機、トリアージエリアを通じて)
  • 環境および工学的コントロールは、病原体の蔓延および物体表面の汚染を減らすことを目的としています。これらには、患者と医療従事者の間に少なくとも1 mの社会的距離を維持できる十分なスペースの提供、 COVID-19が疑われるまたは確認された患者に対する換気の良い隔離室の確保、および適切な環境清掃と消毒を含む。

COVID-19患者の管理において、フィロウイルス病(エボラウイルスなど)のアウトブレイクに用いられるような防護具(つなぎ服、二重手袋、ヘッドカバー)は必要ありません。

PPEの利用を最適化するための推奨事項

最前線にいる医療従事者の保護は最優先事項であり、医療用マスク、呼吸用防護具、手袋、ガウン、眼の防護具などのPPEは、医療従事者やCOVID-19患者をケアするその他の人々に対して優先されなければならない。

グローバルなPPE不足を考慮して、最適なPPEの利用を促進させうる戦略には、医療現場におけるPPEの必要性の最小化、PPEの合理的で適切な使用の確保、およびPPEのサプライチェーン管理メカニズムの調整が含まれます(図1)。

1.医療現場におけるPPEの必要性の最小化
以下の介入により、医療現場におけるCOVID-19ウイルスへの曝露から医療従事者およびその他の人々を保護しながら、PPEの使用と必要性を最小限に抑えることができます。

  • 可能であれば、遠隔医療と電話ホットラインを使用して、 COVID-19が疑われる人々の初期評価を行い、初期評価のために医療施設に行く必要性を最小限に抑える 5
  • ガラスやプラスチックの窓といった物理的障壁を使用して、COVID-19ウイルスへの曝露を減らす。このアプローチは、トリアージおよびスクリーニングエリア、救急部門の受付デスク、または薬が受け渡される薬局窓口など、患者と最初に接する医療現場で実装できる。
  • 待機的または緊急性が高くない処置と入院を延期し、慢性患者の訪問頻度を減らし、可能な場合は遠隔医療と電話ソリューションを適用することで、医療従事者、病棟、およびPPEをCOVID-19の治療現場に再配布できるようにする。
  • ワークフローを合理化しPPEの長期使用を可能にするために、他の伝染性感染症の合併を認めないCOVID-19患者を同じ部屋に集約する(以下を参照)。
  • COVID-19患者ケア専用の医療従事者/チームを指定して、必要に応じてPPEをより長期間使用できるようにする(詳細は、以下の考慮事項のセクションを参照)。
  • 患者ケアの提供に直接関与しない場合、COVID-19患者の部屋に入る医療従事者の数を制限します。ワークフローを合理化し、医療従事者と患者との対面式対話を必要とする患者ケアを安全なレベルに引き下げる。そのために、病室に入る回数を最小限にするための活動(例、与薬の際にバイタルサインを確認する、他のケアを行っている間に医療従事者が配膳する)をまとめるよう考慮し、どの活動をベッドサイドで行うか計画する
  • 特定のPPEの使用は、患者に直接密着する場合または環境に触れる場合に考慮する(例、病室に入って質問だけ行う場合や目視のみ行う場合は、医療用マスクとフェイスシールドを着用し、スクラブスーツの上に手袋やガウンを着用しない)。
  • 訪問者はCOVID-19が疑われるまたは確認された患者の訪問を許可されませんが、厳密に必要と判断した場合は、訪問者の数と面会時間を制限する。面会中に必要となるPPEおよびPPEの着脱方法について明確な指示を訪問者に提供し、訪問者のウイルスへの暴露を防ぐために手指衛生を実施する。

2.PPEの合理的で適切な使用の確保

PPEは管理コントロールおよび工学的コントロールと組み合わせて使用​​する必要がある。 PPEの適応には、場所、対象者、曝露のリスク(例:活動の種類)、および病原体の伝播動態(例:接触、飛沫、またはエアロゾル)に基づく必要がある。 PPEの過剰な使用または誤用は、供給不足にさらなる影響を与えます。 PPEの合理的な使用のためには次の推奨事項を順守する必要がある。

  • COVID-19患者のケアに使用されるPPEのタイプは、場所、対象者、および活動の種類によって異なる(表1)。
  • 患者ケアに直接かかわる医療従事者は、適応に応じてPPEを使用する必要がある(表1)。
  • 具体的には、エアロゾルの発生する処置および補助療法の場合(気管挿管、非侵襲的換気、気管切開、心肺蘇生、挿管前の手動換気、および気管支鏡検査)
    1 、医療従事者は呼吸用防護具、眼の防護具、手袋、ガウンを使用する必要があります。ガウンに耐液性がない場合は、エプロンを併用する必要がある
    4
  • 一般の人々で、COVID-19を示唆する症状のある人、または自宅でCOVID-19患者の世話をする人は、医療用マスクとその使用に関する指導を受けるべきです。詳細は、軽度の症状を示すCOVID-19患者の在宅ケアとその接触の管理を参照 6
  • 追加情報については、コミュニティ、在宅ケア中、およびCOVID-19流行期の医療現場におけるマスク使用に関するアドバイスを参照 7

3.PPEのサプライチェーン管理メカニズムの調整

PPEの管理は国内および国際的に必須のサプライチェーン管理メカニズムを通じて調整する必要があります(以下を含むが、これらだけに限定されない)。

  • 合理的な数量化モデルに基づくPPE予測を用いて、需要に応じた供給の合理化を確保する。
  • 国や大規模なレスポンダーからのPPE需要に対する監視と制御。
  • 在庫の重複を回避するための集中型リクエスト管理アプローチを促進し、廃棄、過剰在庫、在庫の断絶を制限するために必須の在庫管理ルールを厳密に遵守することを確保する。
  • PPEの端から端まで(end-to-end)の配布を監視する。
  • 医療設備店舗からのPPEの分布を監視および制御する。

影響を受ける国からの荷役(貨物の取り扱い)

さまざまな物質表面におけるCOVID-19ウイルスの生存を評価した実験的研究によると、 COVID-19ウイルスはプラスチックおよびステンレス鋼で最大72時間、銅で最大4時間、段ボールで最大24時間生存できます
8。これまでのところ、COVID-19アウトブレイクの影響を受けた国から出荷された商品または製品との接触がCOVID-19感染の発生源であると示唆するデータはありません。 WHOは引き続きCOVID-19アウトブレイクの進展を注意深く監視し、必要に応じて推奨事項を更新します。

COVID-19の発生により影響を受けた国との間で貨物を取り扱う際のPPEの合理的な使用と分配には、以下の推奨事項が含まれます。

  • 影響を受ける国からの貨物を取り扱う際は、いかなる種類のマスクの着用も推奨しない。
  • 粗い表面を操作するときなど、機械的な危険からの保護に使用されない限り、手袋は必要ない。
  • 重要な点として、手袋の使用は頻回に行う適切な手指衛生の必要性(前述)に取って代わるものではない。
  • 供給品やパレットを消毒する場合、通常推奨されている以上の追加PPEは必要ありません。
  • 手指衛生の実践が不可欠です。

表1.  場所、対象者、活動の種類に応じたCOVID-19アウトブレイク時に推奨されるPPE a はページ後半に記載しています

PPEのグローバルサプライチェーンの混乱

PPE、特に医療用マスクならびに呼吸用防護具の備蓄は現在世界的に不十分であり、ガウン、ゴーグル、およびフェイスシールドの供給も現在、世界的な需要を満たすには不十分です。純粋なCOVID-19の件数の増加に加えて、誤った情報およびパニックによる購入や備蓄による世界的な需要の急増がPPEの世界的な不足に拍車をかけています。 PPEの生産増加には限界があり、PPEの不適切使用が広く続く場合は呼吸用防護具ならびにマスクの需要を満たすことができません。

一方で、一部の主要な輸出国の製造会社は生産を再開し始めていますし、またWHOは今後世界的な調整機構が確立されると予測しており、これらが世界的な不足を改善するのに貢献していくと考えられます。最も危うい状態にある国々のニーズを満たすには、専用の支援と確立された国際的連携が必要ですが、供給と流通の混乱に加えて、かつてない需要の急増による価格の高沸のため、金銭的実現可能性での問題に直面する可能性があります。

加盟国と大規模なレスポンダーは、必需品予測ツール(Essential Supplies Forecasting Tool)を利用して、供給ニーズを予測できます。

PPEの深刻な不足時の意思決定プロセスに関する考慮事項

上記のような戦略にもかかわらず深刻なPPE不足が続く場合、「社会全体」の反応を確認するとともに、最前線の医療従事者を保護することが重要です。これにはPPEの緊急増産を支持することが含まれ、たとえば必要に応じて、AMC(事前購入コミットメント)、公共部門が義務付けた民間部門による生産の拡大、寄付オプションの追求、最も危うい状態にある国々でのPPEの購入と流通に対する財政的支援を通じた国際連帯、コミュニティレベルでのPPEの分別のない使用を防ぐために一般大衆と協力すること、などを通じて行うことができます。

PPEの重大な不足を軽減するための一時的な解決策を見つけるための代替アプローチは、科学的証拠、安全管理の提供と医療安全の原則、医療従事者の作業負荷の最小化に基づくべきであり、正しい安全性の元に行われるべきです。

WHOは、現在までの情報に基づいて、IPC分野の国際的な専門家や他の機関と協議し、PPEが深刻に不足している、あるいは手に入らない地域における最後の手段としての一時的な措置を慎重に検討し、下記に記します。

ただし、WHOは、重度または致命的な病気のCOVID-19患者、および多剤耐性または他の接触によって伝染する微生物(接触感染による肺炎桿菌や飛沫感染によるインフルエンザウイルスなど)に同時感染している患者をケアする場合、これらの一時的な措置は可能な限り回避する必要があることを強調します。

  1. PPEの長期使用(標準よりも長期間使用)
  2. 再利用用・使い捨て用に関わらずPPEの再処理後の再利用(洗浄または除染/滅菌後)
  3. WHOが推奨する標準物品の代替物品を検討すること

さらに、製造元が指定した有効期間または期間限定の有効期限を超えたPPEの使用も追加で考えられます。使用前に、性能に影響を与える可能性のある劣化、破れ、摩耗がないことを確認してください。有効期限を過ぎたN95マスクはNIOSH承認に当てはまりませんが、ストラップが無傷で、目に見える損傷がなく、しっかりフィットできるのであれば、呼吸用防護具は依然として医療提供者を保護するのに効果的です。医療提供者は、使用前にマスクを検査し、空気漏れがないか確認する必要があります。

再処理/除染を行わない再利用は、不適切で安全ではないと見なされます。再処理は、ヘルスケア施設の滅菌サービス部門の訓練を受けたスタッフが行うか、管理され標準化された条件下で大規模に行う必要があります。多くの医療機器は再利用できるように設計されているため除染方法に適合しますが、フェイスシールド、医療用マスク、呼吸用防護具には当てはまりません。
通常、どの再処理方法でも、消毒および滅菌前に洗浄することが必要ですが、マスクや呼吸用防護具は洗浄によりマスクの特性が損なわれてしまうため問題となります。

マスクまたは呼吸用防護具を再処理する方法は十分に確立も標準化もされていないため、重大なPPE不足がある場合にのみ再処理を考慮するべきです。 再処理時に考慮すべき問題は次のとおりです。

  1. 消毒または滅菌を保証するプロセスの有効性
  2. 医療従事者に残留毒性をもたらさない再処理方法
  3. 器具の機能と形状の維持。再処理と再利用を検討するときは、可能であれば、製造元の再処理の指示に従ってください。さらに、定期的に検査、修理(該当する場合)し、必要に応じて再利用したPPEを廃棄する(損傷した、再利用に適さなくなったなど)システムを導入する必要があります。

COVID-19パンデミックの例外的な危機シナリオである現在、使い捨てPPEの再処理は、緊急に必要とされており、研究が現在進行形ですすんでいる分野です。 この文書では、実証され、査読付きの論文で公開された、または米国食品医薬品局(FDA)から委託された方法のみが報告されています。 ただし、WHOは有望な方法(医療用マスクの蒸気滅菌または熱滅菌など)を検証している進行中の研究を認識しており、今後適宜追加更新する予定であるため、この文書は暫定的な指針と見なされます。

代替素材

この文書公開日現在、必要な要件を満たさない材料で製造された物品で標準的なPPEを代替すること(医療用マスクや呼吸用防護具の代替としての布マスクなど)は有効性が担保されず、推奨されません(以下を参照)。
医療施設で使用するためのPPEの生産が不足しており現地での生産が考慮されている場合、地方自治体は特定の最低基準および技術仕様に従って提案されたPPEを評価する必要があります。

これらの各対策には重大なリスクと制限があるため、PPEの合理的かつ適切な使用と調達のための他のすべての戦略(図1を参照)を使い果たした場合の最後の手段としてのみ考慮してください。

深刻なPPE不足に関連する一時的な対策の概要

表2は、深刻なPPE不足の状況下での一時的な対策をまとめたものです。各オプションについて、対策の使用方法、限界、PPEの削除基準と予防策、および実現可能性についての説明があります。後者は主に、可能な限り最も安全で最も標準化された条件で対策を実施するためのコストと地域の能力(インフラ、設備、人材など)を考慮し、高所得国(HIC)および低中所得国(LMIC)での実現可能性に関して言及します。

実施された措置に関係なく、医療従事者は、PPEの正しい使用およびその他のIPC予防策に関する必要なIPC教育およびトレーニングを受けている必要があります。これには、COVID-19患者の直接ケアに必要なPPEの装着および取り外し、およびその他のタスク(WHO; How to put on and take off Personal Protective Equipment を参照)に関する適切な手順を順守することが含まれます。

表2. 個人用保護具(PPE)不足による一時的な対策の選択肢:使用延長、再処理、代替PPEの使用 はページ後半に記載しています

WHOが推奨しないオプション:WHOの推奨事項と推奨されないオプション:

  1. 手袋:COVID 19患者を直接ケアする場合はケア時に手袋を着用して、ケア後取り外し、手指衛生するという作業を次のCOVID-19患者のケアに移る前に行ってください。 複数のCOVID-19患者に同じ手袋を使用(延長使用)してはいけません。患者へのケア中および患者から別の人への移動中に、不潔作業と清潔作業の間で手袋を交換し手指衛生を行うことは絶対に必要です。手袋が破れるリスクが高い外科的処置を除いて、二重手袋は推奨されません。
  2. 適切な除染/滅菌を行わずにマスク、ガウン、または目の防護具を再利用する行為は、行わないよう強く推奨します。適切に再処理せずに、汚染されている可能性がある同じPPEアイテムを取り外し、保管し、再着用し、再利用することは、医療従事者にとっての主要なリスク源の1つです。
  3. 医療用マスクや呼吸用防護具の代わりに布マスクを使用することは、医療従事者の保護には適切とは見なされません10。布マスクの生地の厚さや織り方の基準はさまざまで、布を通過する微生物に対する防御(ろ過効率)は不明です。さらに、布マスクは液体を通すため、水分を保持し、汚染され、感染源となる可能性があります10。外層に合成の疎水性材料を使用した布マスクについては、いくつかの研究が行われてはいますが、医療現場におけるPPEとして適切に機能することは示されていません11。他のPPE器具に関して、医療現場で使用するためのマスクの生産が不足しており現地での生産が考慮されている場合、地方自治体は特定の最低基準および技術仕様に従って提案されたPPEを評価する必要があります。今後新しいエビデンスが参照可能になるとWHOはこれらの考慮事項を適宜更新します。

表1.  場所、対象者、活動の種類に応じたCOVID-19アウトブレイク時に推奨されるPPE a

a 適切な PPE の使用に加えて、手指衛生と呼吸器エチケットを常に頻繁に行うこと。PPEは使用後、現地のガイダンスに従って適切な廃棄物容器に廃棄し、PPEを着用する前と脱いだ後に手指衛生を行うべきである。

b 訪問者の数を制限すべきである。訪問者がCOVID-19患者の部屋に入らなければならない場合は、PPEの着脱方法、およびPPEの着脱前と着脱後の手指衛生の実施について明確な指示が与えられるべきである;これは医療従事者によって監督されるべきである。

c このカテゴリーには、1m以上の空間的距離が保たれた状態で行われる、非接触体温計、赤外線カメラ、限定的な観察と問診の利用が含まれる。

d すべての迅速対応チームメンバーは、手指衛生ならびに自己汚染を避けるためのPPEの着脱方法についての訓練を受けていなければならない。

表2. 個人用保護具(PPE)不足による一時的な対策の選択肢:使用延長、再処理、代替PPEの使用  

(一部掲載。全部は以下よりダウンロード)

表2の一部のみ:全文はPDFをご確認ください

付録1:医療用マスクと呼吸用防護具の再処理方法に関する研究

表1は、呼吸用防護具の再処理方法に関する研究の概要を示していますが、医療用マスクを試験した研究は1件のみでした。この研究は1978年に行われたもので、1回のウォームサイクル(55℃、725mg l-1 100% EtOガス)でエチレンオキサイド滅菌器(EtO)を使用し、1時間の曝露後に4時間のエアレーション時間を設けたものです13

記載された方法を採用するかどうかを検討する際には、除染手順のためのマスクと呼吸用防護具の取り扱いが重要なステップであり、過度の操作は避けなければならない。また、各再処理サイクルの前には、それらの完全性と形状維持をチェックするために、慎重に検査を行うシステムを整備すべきである。再処理方法が許容されるかどうかを判断するために考慮すべき重要な点は、以下の通りです。1) 装置を消毒・滅菌する方法の有効性、2) 呼吸用防護具のろ過性の保持、3) 呼吸用防護具の形状とそのフィット感の保持、4) 呼吸用防護具を装着している人の安全性 (例:再処理後の毒性の影響)です。

マスクへの損傷、毒性、またはろ過効率の低下のために避けなければならない方法があります:洗浄、134℃での蒸気滅菌、漂白剤/次亜塩素酸ナトリウムまたはアルコールによる消毒、または電子レンジの照射14。電子レンジは、水分と組み合わせて放射線と蒸気の熱を組み合わせることで、ある程度の殺菌効果を示しているが、慎重な検討が必要となる問題点がある:i)呼吸用防護具の消毒を伴う標準的な電子レンジの放射線容量の実質的な検討が不足していること、ii)蒸気の均一な分布を確保するための制御ができないこと、およびiii)呼吸用防護具の金属製のノーズバンドが発火する可能性があることの懸念15,16。ガンマ線照射は新興ウイルスに対する有効性を実験的に示したが、この方法に対してマスクや呼吸用防護具に特化した評価はなされていない。

過酸化水素14,18,19とエチレンオキサイドの蒸気はともに、いくつかの研究では良い結果を示したが、評価された呼吸用防護具のモデルは限られていた。紫外線照射の使用は、代替手段として可能性がありますが、紫外線の透過力が低いため、呼吸器の内側の素材に届かなかったり、プリーツや折り目から透過しなかったりすることがあります20。マスクや呼吸用防護具の再処理を目的とした UVC 光を用いた消毒のパラメータはまだ完全に標準化されていないため、適切な照射時間でマスク内外のすべての表面に UVC 光が到達することを保証する検証手順が必要である20,21。方法に関する研究間の比較は、結果や評価方法が異なるために限られている。また、実用的な検討のためには、手法のすべてのパラメータを制御することの実現可能性も含めて検討しなければならない。

表1.  医療用マスク及び呼吸用防護具の再処理方法に関する研究

 一部のみ掲載。全文はPDFをご確認ください。

一部のみ掲載:全文はPDFをご確認ください

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