COVID19医療翻訳チーム(covid19-jpn.com)

有志医療者による海外論文の翻訳、医療情報

JAMA_アメリカの公衆衛生にとっての優先事項

翻訳日:2020/03/11

原文:Priorities for the US Health Community Responding to COVID-19

2019 年 12 月下旬、中国の武漢で原因不明のウイルス性肺炎が予期せず発生し、その症例は密集した。1 この最初のクラスターは、すぐにコロナウイルス病 2019 (COVID-19) として知られるようになるウイルスに感染しており、新型コロナウイルスの世界的な流行の到来を告げ、それは、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス 2 (SARS-CoV-2) というウイルスである。現在までに、60 カ国以上で 90,000 件近くの症例が発生し、約 3000人が死亡した。世界保健機関(WHO)は、これらの症例について、国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態と宣言した。

COVID-19 ワクチンの開発と製造には 12-18ヶ月かかると予想され、それが十分な効果でない可能性がある。治療薬は、すでに臨床試験が進行中で、迅速に開発されるかもしれないが、それがいつになるかはわからない。COVID-19 に関してはいまだに不確実な点が多く、中国や他の国々での無症候性または軽症の症例数、人口全体の感染率、世界中の国々での究極の致死率ケース致命率が明らかになっていない。

このように不明確なことがいくつかあるにもかかわらず、COVID-19が新しい危険な流行であることは明らかだ。これを考慮すると、COVID-19に関するアメリカの公衆衛生部門を準備するため、そして公衆衛生の介入で病気の蔓延スピードを遅くすることを目指すための重要な行動をとる必要がある。

流行初期のために準備計画の評価と修正

2009 年春に、新型インフルエンザ A(H1N1) の出現が重症疾患の報告に関連付けられた。感染のピークが過ぎてから初めてワクチンが利用可能となったが、特定のワクチンはなかった。感染症発生の軌道について多くの疑問点があった。政府、病院、企業は、2003 年の SARS の流行と 2005 年の鳥インフルエンザ A(H5N1) の流行の後、数年間、世界的流行に対し対策をしてきた。

2009 年に、インフルエンザの世界的流行に対する計画が実行され、病院では救急部門や集中治療室 (ICU)の患者が急増し、改善された診断検査が配備された。多くの点で、現在のコロナウイルスの流行は、2009年のインフルエンザ大流行の始まりを連想させる。多くの医療機関は当時、計画に労力をかけており、もしもまだその計画が存在するなら、今回の計画の基盤として使用するべきである。大まかに言えば、これらの計画は、医療従事者の保護、人員不足への対処方法、患者数の急増、トリアージの問題、希少資源の管理に対処した。これらの計画に関与していなかった医療機関は、他の機関での計画の例や複雑な問題に対処する方法についての勧告を求めるべきである。

対応するための病院や診療所の準備

病院と診療所は対応において重要な役割を果たす。この役割には、SARS-CoV-2 感染患者から伝染しないように、救急部門や緊急医療センターで感染が疑われる患者をトリアージおよび隔離するためのプロトコルを確立することが挙げられる。COVID-19 が通常の医療を妨げたり、病気の直接的な罹患率と死亡率を悪化させないように、外来診療所、透析センター、その他の医療施設、特に、脆弱な人々のいる老人ホーム、介護付き住宅でも同様の手段を確立する必要がある。

COVID-19 に対応する上で深刻な問題は 、中国では大きな問題となってきているが、医療従事者を感染から守り、院内感染を予防することである。2こ れ は 、 病 院 での管 理方法 や工学的制御、病院スタッフの特別訓練や個人防護具(PPE)の使用の組み合わせとなる。医療関係者のリーダーは、できるだけ多くPPE の製造と入手ができるように、PPE の提供者や政府機関と緊密に協力する必要がある。

患者の一部は重篤になり、救命医療の介入が必要となるため、ICUは具体的な準備が必要である。この計画とは、ICU ベッド数を評価したり、ステップダウンユニットや麻酔後管理室のような代替的な病棟を用いてICUと同じレベルの病棟を増強させられるように、また、人工呼吸器の備蓄やサプライチェーンを確保し、患者隔離し、患者の経過を追うなどのことである。多くの病院はすでに病院の収容能力の最大限を駆使、またはそれに近い状態で活動しており、インフルエンザの平均以上の状態でさえ、医療が混乱する可能性がある。

2009 年に起きたインフルエンザの世界的流行の際は、体外式膜型人工肺 (ECMO)などの高度なモダリティが、重度の急性呼吸窮迫症候群(ARDS)の多くの患者に使用された。COVID-19 に ECMO を使用する基準は資源が許す限りは、ARDS の管理に熟達した機関で開発する必要がある。3

さらに、重症患者への対応の標準化や希少資源の配分に関する病院の方針は、資源が、必要な人全員を治療するには不十分な場合に作成されるべきである。

臨床医は、COVID-19 についてより多く学ぶにつれて更新される具体的な臨床ガイダンスから情報を得続ける必要がある。しかし、肺炎、敗血症、ARDSに対する既存のガイダンスを遵守することは、最も証拠に基づく医療の提供に役立つ。これには、抗ウイルス薬または抗モノクローナル抗体療法を治験として使用することも含まれる場合がある。

診断検査を迅速に広げる必要がある

最近まで、診断検査はすべて、 CDC によって行われ、中国への旅行歴と臨床症状の両方があることに基づいていた。今週、州および公衆衛生研究所は、他の研究所と同様に、独自の SARS-CoV-2 診断検査を開発し、使用する権限を得た。これにより、広範に検査をすることが可能になり、すでにアメリカの様々な地域で、中国への渡航歴がない場合も含めさらなる症例が認識されるようになってきた。4  5つの都市でのCOVID-19 の監視を開始する計画が発表された。

COVID-19 という苦難をよりよく理解するために、医療および公衆衛生の専門家は、原因不明の ARDS や重症肺炎の患者すべてに検査を拡大できるようする必要がある。そして最終的にはCOVID-19 と一致する軽度の症状のある患者にまで広げるべきである。CDCや公衆衛生研究所は、流行時に診断する診療所や病院で対応可能なレベルの検査ができるようには作られていない。

検査能力を高いレベルにするには、主要な臨床診断に関わる企業が大規模に検査キットを開発し、製造する必要がある。診断に関わる企業は、すでにある呼吸器ウイルスの核酸を検査するパネルにSARS-CoV-2を追加する、または他にない新しい検査を作成することが、容易にできるかもしれない。理想的には、このような診断的検査は迅速に、そしてCLIA法ではない方法で行い、診療現場で利用可能になるといい。血清学的試験法は、特に監視目的で、また、正確な死亡率を決定するためにも必要とされる。

臨床医と公衆衛生の専門家は、SARS-CoV-2 診断検査の操作特性に関する明確な情報を得る必要がある。最良の臨床的、公衆衛生学的決定をくだすためには、この検査の偽陽性、偽陰性、予測値を知る必要がある。SARS-CoV-2 の検査を患者に正確に行えるようになることは、準備におけるあらゆる点において必須である。

感染拡大を緩徐にする公衆衛生の取り組み

当初から、SARS-CoV-2の封じ込めは不可能な課題であるとされていた。発生は 12 月下旬に初めて認められ、1 月中旬に大規模な封じ込めが始まった。このウイルスは、呼吸器を通して広がり、非常に軽症の症例を含む幅広い病態となるため、ヒト-ヒト間、感染者が約 1 週間で倍増するほど効率よく感染し、少なくとも 6 週間は気づかないうちに広がっていた。疾患の発生地と関連がない国を含め益々多くの国が症例報告をするにつれ、世界ではより多くの、まだ認識されていない症例があり、多くの国で地域での伝染が起こっていることは明らかである。

中国では、特に武漢でCOVID-19 の広がりは速く激しかった。そのパターンが世界の他の都市で起こるかどうかはまだ明らかではない。公衆衛生対応の1つの重要な目標は、広がりの速度と流行曲線のピークを減少させることであるべきだ。季節性インフルエンザと流行性インフルエンザでは、都市それぞれが、それぞれのタイミングで流行のピークを経験した。都市での感染拡大を遅くするための公衆衛生による介入で最も大切なものは、迅速診断と感染患者の隔離であろう。5  流行のこの初期段階では、症例数が少ない場合、公衆衛生に関わる人々は、資源が許す限りは症例患者の接触歴を追跡し、2 週間のウイルス潜伏期間の間は患者を自宅待機にするべきである。ただし、一定の閾値を超えると、全ての患者の連絡先を追跡することが不可能となるだろう。

公衆衛生担当者は、また、地域での感染拡大を遅らせるための追加措置、つまり”社会距離戦略”という行為であり、それを検討する必要もある。これらの措置には、大規模な集会の中止、

可能であれば在宅勤務、学校閉鎖などが含まれうる。これらの措置には歴史的に限られた証拠しかないが、これらの方法により人々の交流が減り、地域でウイルスが拡散する可能性が低くなりうることを考慮すると、これらの措置には効果に対しての共通認識がある。しかし、政治・公衆衛生の指導者は、これらの措置の潜在的な利益を、措置による負の社会的な負担に沿って考える必要がある。例えば、学校の閉鎖は、学校給食を頼りにする多くの子供たちが給食を受け取ることはできず、多くのひとり親は労働力から外れることになるだろう。

公衆衛生の指導者は、また、感染や感染拡大のリスクを下げる方法について明確に一般市民に伝える必要がある。例えば、いつどのように正しく手を洗うか、咳とくしゃみは手で覆う、具合が悪い時は自宅待機するなどである。また、このウイルスへ陽性反応を示すが病院での医療は必要ない人は、具合が悪い時は自宅待機し、病院に行かないようにと、一般市民や医療システムに伝えることも重要である。病院は急性期医療を必要とする人数を受け入れる重要な課題があるので、感染しているが病院の必要性に貢献しない人々には重要であるだろう。

準備において重要なこと

SARS-CoV-2 はアメリカを含め世界中に広く拡散することは明らかであるが、感染者や広範な社会ではこの疾患の影響は、医療機関や公衆衛生機関の準備と対応により大きく変わるだろう。準備には時間がかかるので、医療・公衆衛生制度が国中でこの疾患に立ち向かうために備えられるよう、迅速に進める必要がある。

*翻訳はセカンドチェックを行っていない1次翻訳の状態の場合があります。翻訳記事を利用する際は、各施設および個人の臨床医の判断と責任下で行ってください。 下記の「翻訳ポリシー・記事内容の利用について」のページもご参照ください。

参考文献

1. Paules CI, Marston HD, Fauci AS. Coronavirus infections—more than just the common cold. JAMA. 2020;323:207-208. doi:10.1001/jama.2020.0757

2. Wang D, Hu B, Hu C, et al. Clinical characteristics of 138 hospitalized patients with 2019 novel coronavirus–infected pneumonia inWuhan. JAMA. Published online February 7, 2020. doi:10.1001/jama. 2020.1585

3. MacLaren G, Fisher D, Brodie D. Preparing for the most critically ill patients with COVID-19. JAMA. Published online February 19, 2020. doi:10.1001/ jama.2020.2342

4. FDA. Coronavirus (COVID-19) update: FDA issues new policy to help expedite availability of diagnostics. February 29, 2020. https://www.fda.gov/news-events/press-announcements/coronavirus-covid-19-update-fda-issues-new-policy-help-expedite-availability-diagnostics

5. Hellewell J, Abbott S, Gimma A, et al Feasibility of controlling COVID-19 outbreaks by isolation of cases and contacts. Lancet. Published February 28, 2020. doi:10.1016/S2214-109X(20)30074-7

次へ 投稿

前へ 投稿

© 2020 COVID19医療翻訳チーム(covid19-jpn.com)

このサイトについて