COVID19医療翻訳チーム(covid19-jpn.com)

有志医療者による海外論文の翻訳、医療情報

WHO_COVID-19感染を理由とする差別について

翻訳日:2020/03/14

原文: Social Stigma associated with COVID-19

対象読者:新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対応する政府、報道機関、地域の組織

新型コロナウイルス感染症に関連する社会的差別(スティグマ)について

社会的スティグマの防止と対応ガイド(1

社会的スティグマとは?

健康という文脈における社会的スティグマとは、ある特定の特徴をもつ個人や集団を、ある特定の病気と誤って関連付けることを指します。

感染症流行時には、これは疾患と直感的に結びつけることにより、人々がレッテルを張られ、固定観念を持たれ、差別を受け、別々に扱われ、社会的地位を損なわれる体験をすることを意味します。

このような扱いは、疾患を抱える人々だけでなく、介護者、家族、友人、地域社会にも悪影響を与える可能性があります。

病気ではないが、その集団とは別の特徴をもつ人々も、スティグマに苦しめられる可能性があります。

現在のCOVID-19の流行は、特定の民族的背景を持つ人々に留まらず、ウイルスに接触したと思われる人に対しても、社会的スティグマや差別的な行動を引き起こしています。

COVID-19は、どうしてこれほどのスティグマを引き起こしているのでしょうか?

COVID-19に関連したスティグマのレベルは、主に3つの要因に基づいています。

1)新しい、未だ不明な点が多い疾患であるということ。

2)私たちはしばしば未知のものを恐れるということ。

3)その恐怖を「他者」と関連付けるのは容易であるということです。

大衆の間に混乱、不安、恐れがあることは理解できます。

残念なことに、これらの要因は有害な固定観念を形成することにも拍車をかけています。

どんな影響がありますか?

スティグマは、社会的結束を弱め、集団に予想される社会的孤立を促進します。これにより、ウイルスが広がりやすくなる状況に寄与する可能性があります。

“その結果、健康上の問題がより深刻化し、感染症の流行をコントロールすることがより困難になる可能性があります。

スティグマは、

•差別を避けるために疾患を隠すよう人々を駆り立てます。

•人々がすぐに医療を受けないようにします。

•人々が健康的な行動をとることをやめさせます。”

社会的スティグマへの対処方法

伝染病に関するスティグマと恐怖が対応を妨げることを示した、明確なエビデンスがあります。

効果的なのは、信頼できる医療サービスとアドバイスへの信頼関係を築き、被害にあった人に共感を示し、疾患そのものを理解し、人々が自身や家族の安全を保つために効果的で実用的な手段を採用することです。

“COVID-19について私たちがどのように伝えるかは、人々が病気と闘い、恐怖やスティグマに拍車をかけるのを防ぐために効果的な行動をとることを支援する上で重要です。

病気やその影響を、オープンに、正直に、効果的に議論し、対処できる環境を作る必要があります。

“複雑な社会的スティグマに対処し、これを回避する方法に関して、いくつかのヒントがあります。

1.言葉が大切:新型コロナウイルス感染症について話すときにすべきこと、すべきでないこと

2.自分の役割を果たそう:スティグマを追い払うためのシンプルなアイデア

3.コミュニケーションのヒントとメッセージ

①言葉が大切:

“コロナウイルス病について話すとき、特定の単語(例:疑い例、隔離など)や言い回しが、人々にとって否定的な意味を持ち、差別的態度を助長させることがあります。

これらは既存の否定的な固定観念や臆説を存続させ、疾患と他の要因との間の誤った関連性を強化し、広範な恐怖を生み出し、病気を抱える人々の人間性を否定する可能性があります。

これにより、スクリーニングや検査、隔離を避けるよう人々を駆り立てる可能性があります。

メディアを含むすべてのコミュニケーションチャネルでは、人々を尊重し、力を与える”‘people-first’ language”を使うことをお勧めします。

メディアで使用される言葉は特に重要です。なぜなら、これらは新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する一般的な言葉づかいやコミュニケーションを形成するからです。

“否定的な報道は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の疑いのある人々や患者、その家族、被害を受けたコミュニティがどのように認識され、対応されるかに影響を及ぼす可能性があります。

差別のない言葉遣いや用語法が、HIV、結核、豚インフルエンザ2などの大規模な流行を制御するのにどう役立つかについては、多くの具体例があります。

やるべきことと、やるべきではないこと

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)について話すときの言葉遣いに関して、やるべきこととやるべきではないことを以下に示します。

DO-新型コロナウイルス感染症(COVID-19)について話しましょう。

Don’t-病名に地名や民族名を付けないでください。この病気は「武漢肺炎」「中国肺炎」「アジア肺炎」ではありません。

疾患の公式名称は、スティグマ化を避けるために意図的に選択されました。「co」はコロナ、「vi」はウイルス、「d」は疾患を意味します。「19」はこの疾患が2019年に出現したことによるものです。

* 例としてUNAIDSの用語法ガイドラインでは、「エイズの犠牲者」ではなく「HIVと共に生きる人々」、「エイズとの戦い」ではなく「エイズへの対応」と記載することを推奨しています。

DO-「COVID-19を持っている人」や「COVID-19の治療を受けている人」、「COVID-19から回復している人」、「COVID-19により亡くなった人」について話しましょう。

Don’t-疾患を抱えた人を「COVID-19の症例」や「犠牲者」と呼ばないで下さい。

DO-「COVID-19に罹っている可能性のある人」または「COVID-19に罹っていると推定される人」について話しましょう。

Don’t-「COVID-19の容疑者」または「疑い例」と話すのはやめましょう。

DO-COVID-19に「罹っている」、「感染している」人々について話しましょう。

Don’t-「COVID-19を伝染させる」、「他の人に感染させる」、「ウイルスを拡散する」人々、と呼ぶのはやめましょう。意図的に伝染させることをほのめかしており、非難を被るからです。

犯罪や人間性を否定するような用語を使うと、病気の人々が何らかの形で間違ったことをしたか、他の人よりも人間的ではないという印象を与え、スティグマを助長し、共感する気持ちを弱めます。また治療を受けることや、スクリーニングや検査、検疫に参加することへの抵抗を促進させる可能性があります。

DO-科学的データや最新の、公式の健康上のアドバイスに基づいて、COVID-19の危険性について正確に話しましょう。

Don’t-根拠のない噂を繰り返したりシェアするのをやめ、「ペスト」、「黙示録」などの恐怖を生むよう設計された誇張表現の使用を避けましょう。

DO-予防と治療の効果をポジティブに話し、強調しましょう。ほとんどの人にとって、これは克服できる病気です。私達自身や家族、そして最も脆弱な人々を安全を守るために、私たち全員がとることができる簡単な予防法があります。

Don’t-脅すような、ネガティブなメッセージを強調し、くどくど述べることはやめましょう。最も脆弱な人々の安全を守るために、私達は協同する必要があります。

DO-早期のスクリーニング、検査、治療だけでなく、新型コロナウイルスの感染を防ぐ予防策を取り入れることの有効性を強調しましょう。

②自分の役割を果たそう:

政府、市民、メディア、主要なインフルエンサー、およびコミュニティは、一般に中国とアジアの人々を取り巻くスティグマを防ぎ、阻止する重要な役割を担っています。

ソーシャルメディアや他のプラットフォームでコミュニケーションをとる場合、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関連する支援的行動を示すとき、私達は皆計画的で、思慮深くある必要があります。

差別的態度に対抗するための、実践可能なアクションに関するいくつかの例とヒントを以下に述べます。

 •事実の拡散:スティグマは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染経路や治療法、予防法に関する不十分な知識によって、さらに悪化する可能性があります。

 これに対して、被害を受けた地域、COVID-19に対する個人や集団の脆弱性、治療の選択肢、医療や情報にアクセスできる場所に関する、国およびコミュニティごとの正確な情報の収集や統合、普及を優先しましょう。

シンプルな言語を使用し、

専門用語を避けましょう。

ソーシャルメディアは、比較的低コストで多くの人々に健康情報を提供するのに役立ちます。

•宗教的指導者などの社会的影響力のある人々4に、スティグマ化された人々とその支援の方法について良く考えてもらえるよう、あるいは尊敬される著名人にスティグマを軽減するメッセージを増幅するよう促します。

情報は十分にターゲットを絞る必要があり、情報を伝えるよう依頼する著名人は、個人的に関与しており、なおかつ影響を与えようとする聴衆に対して、地理的および文化的に適切な人物でなければなりません。

例えば、市長(または別の重要なインフルエンサー)がソーシャルメディアでライブを行い、中国コミュニティのリーダーと握手を交わすなどが挙げられます。

•新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を経験し、回復したか、回復するまでその人を支援した地元の人々の姿、声、物語を増幅して、ほとんどの人がCOVID-19から回復することを強調しましょう。

また、差別を受けるかもしれない看病する人や医療従事者を称える「ヒーロー」キャンペーンを実施しましょう。地域住民のボランティアは、地域のスティグマを減らすことにも大きな役割を果たします。

 •様々な民族集団を描写しているということを意識しましょう。

すべての資料は、COVID-19の影響を受け、その蔓延を防ぐために協同する、多様なコミュニティを示す必要があります。

書体、記号、フォーマットが中立的で、特定のグループを示唆しないことを確かめましょう。

•倫理的ジャーナリズム:個々人の行動と患者の「COVID-19の拡散」に対する責任に過度に焦点を当て、大衆受けを狙うような報告は、疾患を患っているかもしれない人々のスティグマを増大させる可能性があります。

例えば、メディアの中には、各国の「爆心地となった患者」を特定しようとして、COVID-19の原因を推測することに焦点をあてる者がいます。

ワクチンと治療法を見つける努力を強調することは、恐怖を増大させ、いま私たちには感染を止める力がないのだという印象を与えます。

代わりに、基本的な感染予防策、COVID-19の症状、いつ医療機関を受診すべきかに関する内容を宣伝しましょう。

•つながろう:スティグマとステレオタイプに対処するための多くの取り組みがあります。これらの活動に参加し、すべての人にケアと共感を示すムーブメントや前向きな環境を作り出すことが大切です。

③コミュニケーションのヒントとメッセージ

誤情報や噂という「情報伝染病」は、今の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発生よりも急速に広がっています。

これは、流行の被害を受けた地域の人々のスティグマ化や差別を含む悪影響を及ぼします。

この新しいアウトブレイクの影響を受けた地域や人々を支援するために、集団の連帯と明確で実用的な情報が必要です。

誤解や噂、誤情報は、対応しようとする努力を妨げるスティグマや差別の一因となっています。

-誤解を修正すると同時に、根底にある前提条件が間違っていたとしても、人々の感情やそれに基づく行動は非常に現実味を帯びたものだと認めましょう。

-予防や救命処置、早期スクリーニング、治療の重要性を宣伝しましょう。

集団の連帯と世界的な協力は、さらなる拡大を防ぎ、地域の不安を和らげるために必要なものです。

-共感を呼ぶ物語、つまり新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の被害にあった個人または集団の体験談や苦闘に人間らしさを与えてくれるストーリーをシェアしましょう。

-この流行への対応の最前線にいる人々(医療従事者、ボランティア、地域のリーダーなど)に対する支援と励ましを伝えましょう。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大を止めるのは、恐怖ではなく事実です。

-病気に関する事実と正確な情報をシェアしましょう。

-迷信や固定観念を疑いましょう。

 COVID-19に関する間違った迷信についてはこちら解説しています

-慎重に言葉を選びましょう。コミュニケーションの方法が、他人の態度に影響を及ぼす可能性があります

(上記の「やるべきことと、やるべきではないこと」を参照)。

1) This checklist includes recommendations from Johns Hopkins Center for Communication Programs, READY Network.

1このチェックリストには、ジョンズホプキンスコミュニケーションプログラムセンター、READYネットワークからの推奨事項が含まれています。

2. 本文中で解説:

3 ナイジェリアでは、西アフリカの他の3か国に影響を与えた2014年のエボラ出血熱アウトブレイクの抑制に成功しました。その一部は、ターゲットを絞ったソーシャルメディアキャンペーンを採用して正確な情報を広め、TwitterやFacebookで流布するデマメッセージを修正することによるものです。

国際的な非政府組織(NGO)やソーシャルメディアのインフルエンサー、著名人、ブロガーたちが幅広いプラットフォームを利用して、共有された健康コミュニケーションに関する情報や意見を転送および共有することで、介入はより一層効果的なものとなりました。

Fayoyin, A.2016. Engaging social media for health communication in Africa: Approaches, results and lessons. Journal of Mass Communication and Journalism, 6(315).

4「アンジェリーナ・ジョリー効果」という用語は、2013年に大きく取り上げられた、女優のアンジェリーナジョリーが予防的両側乳房切除術から数年後に、乳がんの遺伝学および検査に関するインターネット検索が増加したことを説明するために、公衆衛生コミュニケーションの研究者たちによって作られました。 その「効果」は、信頼のおける情報源を著名人が支持することは、大衆が健康に関する知識やCOVID-19に対する姿勢、COVID-19に対する医療サービスの普及を求めるよう働きかけるために効果的であることを示唆しています。

*各記事の翻訳はWHOによるものではありません。(WHOのポリシーにもとづく掲示)
*翻訳文は当チームが翻訳を行った時点のWHOサイト掲載内容にもとづくもので暫定的な情報です。各記事に原文へのリンクを掲載しています。原文記載の発表日および当サイトでの翻訳日を各記事に記載していますので参照してください。
*セカンドチェックを行っていない1次翻訳の状態の場合があります。翻訳記事を利用する際は、各施設および個人の臨床医の判断と責任下で行ってください。 下記の「翻訳ポリシー・記事内容の利用について」のページもご参照ください。

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テーマの著者 Anders Norén