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RCGP_COVID19のために死に直面する患者の
ケアガイダンス☆

翻訳日:2020/04/02

原文: Guidance on the management of symptomatic patients dying from COVID-19

Royal College of General Practitioners   RCGP(英国家庭医学会)

フローチャート(図1)

基本的方針

経験を積んだ臨床医は、患者が臨死期であるとの診断を下す前に、可逆性の原因を除外せねばなりません。原因不明の呼吸困難が認められる場合は、入院を検討する必要があります。

新型コロナウイルス感染症が疑われるもしくは確定し、死に直面している場合であっても、全人的個別ケアと症状コントロールという標準的な治療原則を継続しましょう。多くの患者は軽い呼吸器症状を呈し、すでに別の原因によって死に直面しているため、一般的な緩和ケアのみを要します。

■ COVID-19による死亡 

 以下のうちひとつないし両方の病態により死亡する  

急性呼吸促迫症候群(ARDS)による 1型呼吸不全  

・細菌性敗血症性ショック様のサイトカインストームによる全身性ショック

■頻度の多い 終末期の症状 

 発熱、悪寒、高度の呼吸苦、咳嗽、せん妄、興奮

■ 経過 

 急激に発症し数時間持続

→通常の緩和ケアと比べて、多めの用量の薬剤を迅速に投与できるようにしておくことが重要

■ 薬剤のオプション 

 ・発熱・悪寒・せん妄 →解熱薬 

 ・咳嗽・呼吸苦     →オピオイド 

 ・興奮         →ベンゾジアゼピン 

 ・せん妄・興奮     →向精神薬 

※急激な発症、かつ高度な症状であり(加えて持続注射用ポンプが不足することも予想されるため)、必要な薬剤を皮下注射(まずワンショットで)することが、迅速かつ良好な症状緩和を保障することになる。

■ 投与経路 

・皮下への留置が望ましい(トンボ針、小児ベンフロンなど) 

・72時間毎もしくは留置箇所に発赤や疼痛がある場合は72時間よりも前に交換 

・経口は困難なことが多いが可能なら経口モルヒネ液は使用できる 

・ロラゼパム、モルヒネ、オキシコドンは舌下、ミダゾラムは頬内投与できる 

・感染のリスクがあるため経肛門投与は避ける

■ 薬物療法の論拠 

・パンデミック下においてはスタッフが不足するため、頻回の投与なしで効果的な症状緩和を目指す 

・効果的な症状緩和のためには、通常より多い用量が必要とされる可能性がある。 

・多くの患者が経験する、最終段階の高度な不安や呼吸困難に対しては、意識状態を迅速かつ深く低下させるために、通常よりも多量の鎮静薬が必要となる可能性がある。 

・頻回の皮下投与を行うためのスタッフが不足するため、通常より少ない投与量では症状コントロールが不十分となり、本人家族にとって苦痛が取り除かれない可能性がある。

■ 薬物動態の考慮 

・モルヒネ、オキシコドン、ミダゾラムは皮下、舌下、頬内投与後約4時間有効 

・モルヒネ、オキシコドン、ミダゾラムは経口、舌下、頬内投与で吸収に差はなく同容量で可 

・すでにモルヒネが開始されている場合、レスキュードーズを思い出す=1/6 

・迅速な症状コントロールのためには1時間毎の投与が必要かもしれない 

・レボメプロマジンは12-24時間効果がある鎮静効果のある向精神薬で、25-50㎎の皮下投与で1時間以内に抗不安と鎮静の効果があらわれる。 

・3剤を併用することで1回の皮下投与で18-24時間の理想的症状コントロールを期待できる。

・フェンタニル、ブプレノルフィンの貼付薬は効果発現に時間がかかる(12時間以上)ため用いない。 

・発熱はせん妄・興奮を悪化させる。NSAIDSはアセトアミノフェンより効果が持続するため好まれ、死期を早めることはなさそう 

・終末期における酸素投与にはあまり効果がなく、オピオイドと鎮静薬がより有効である。

■ フローチャート(図1)

経験を積んだ医師がCOVID-19による死期が差し迫っていると判断

➡体温37.5℃以上の場合

ナプロキセン500㎎ or アセトアミノフェン1000㎎投与  冷罨も有効、扇風機はウイルスの散布を増長する可能性があるため避けたほうが良い呼吸苦、興奮による高度な苦痛を認める場合 

➡呼吸苦、興奮による高度な苦痛を認める場合 

・モルヒネ 2.5-5㎎ or オキシコドン2.5-5㎎ 皮下/舌下 

・ミダゾラム 2.5-5㎎ 皮下/頬内 or ロラゼパム 1㎎ 舌下 

・レボメプロマジン 12.5-25㎎ 皮下 or ハロペリドール 5mg 皮下  

※一部の患者はより高用量が必要 
フレイル高齢者ではより低用量が適当

➡必要時の投与(レスキュー)として以下の指示を行う。
増量の閾値基準は低く設定する。

・呼吸苦時:モルヒネ 2.5-5㎎ or オキシコドン2.5㎎ 皮下/舌下 1時間毎 

・興奮/パニック:ミダゾラム 2.5-5㎎ 皮下/頬内 1時間毎(最大80㎎/日) 
or ロラゼパム 1㎎ 舌下 2時間毎

・興奮/せん妄:レボメプロマジン 12.5-25㎎ 皮下 1時間毎(最大250㎎/日)
or ハロペリドール 1.5-3mg 皮下(最大15㎎/日) 

・気道分泌物:グリコピロニウム400マイクログラム 皮下 1時間毎(最大1.2㎎/日)
or ハイオシンブチルブロミド 20mg 皮下 1時間毎(最大120㎎/日)  

家族が投与を望んでいて任せられると判断されれば、以下のハンドアウトをもとに、安全を考え投与間隔を延ばした形で指示する。  

■ 家族向けハンドアウト

*翻訳は現時点での暫定的な情報を元に作成されています。本記事の利用については、各施設および個人の臨床医の判断と責任下で利用してください。

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