COVID19医療翻訳チーム(covid19-jpn.com)

有志医療者による海外論文の翻訳、医療情報

AJOG_COVID19解説:産科医が知っておくべきこと

 翻訳日:2020/02/26

原文:Coronavirus Disease 2019 (COVID-19) and Pregnancy: What obstetricians need to Know

序論

・コロナウイルスは、一本鎖RNA、非セグメント化、エンベロープウイルスであり、一般的な風邪程度から重度および致命的な呼吸器疾患まで及ぶ幅広い重症度の感染症を引き起こします。

・Coronavirus Disease 2019 (COVID-19)の妊娠中の感染に関して入手できる情報は限られているが、関連する過去のCoronavirus Disease(SARSやMERS)の情報はCOVID-19の妊娠中の影響についても知見を与えてくれるかもしれません。

・現時点における、COVID-19の主要な疫学的危険因子は、中国本土(特に湖北省)からの渡航または症状の発現から14日以内の感染者との密接な接触と考えられています。

・潜伏期間は約5日間と考えられています(範囲2〜14日)。

・妊娠中のCOVID-19感染に関する2つの報告では、すべてが妊娠後期(妊娠28週以降)の感染で、臨床所見は妊娠していない成人のものと同様でした。胎児機能不全と早産が数件認められました。 2件を除く全ての分娩は帝王切開であり、SARS-CoV-2は検査したすべての新生児で陰性でした。

・妊娠中のSARSに関する研究報告では、12名の妊婦の致死率は25%でした。4名にARDS、3名にDIC、3名に腎不全、2名に続発性細菌性肺炎、2名に敗血症が認められました。人工呼吸器の使用は、非妊婦に比べて妊娠中では3倍高いリスクでした。妊娠初期の7名の感染のうち、4名は自然流産で、妊娠24週以降の感染では5名中4名が早産でした。MERS-CoVについては、妊婦で13名の症例報告があり、そのうち2名は無症候性で、3名の患者(23%)が死亡しました。2名は胎児死亡となり、2名は早産となりました。胎児への子宮内感染はSARSでもMERSでも認められませんでした。

・現在、コロナウイルス対する特異的な治療は、米国食品医薬品局によって承認されていません。COVID-19は妊娠合併症のリスクを高める可能性があるため、妊婦の治療は母親と胎児の厳重なモニタリングが可能な医療施設で行うことが推奨されます。

・COVID-19に関する情報は急速に集積されつつあるため、臨床医はCDCのWebサイトにアクセスして、最新情報を確認することが求められます。https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-nCoV/hcp/index.html

ウイルスの臨床的・疫学的な特徴

・新型コロナウイルス(現在はSARS-CoV-2と呼ばれます)により引き起こされる呼吸器疾患は、中国湖北省武漢で2019年12月に最初に発見されました。WHOの中国局において、病因不明の肺炎の発生が2019年12月31日に通知されました。

・SARS-CoV-2の人から人への感染は、インフルエンザおよびその他の呼吸器病原体に類似していると考えられています。例えば、感染した人が咳やくしゃみをしたとき小滴が形成・飛散し、これらの水滴は通常6フィート以内の密接な接触によって吸入されます。接触感染で伝染するかどうかは不明です。SARS-CoV-2は便検体で検出され、SARS-CoVは糞口感染で拡散したと考えられました。

・基本的な再生数(R0:一人の感染者から感染すると考えられる平均の人数)は、感染性の持続期間、病原体の伝染性、および感染を起こしうる接触数などにより影響されます。はしかは非常に感染性が高く、R0は12〜18ですが、2009年のH1N1インフルエンザとSARSはR0がそれぞれ1.2〜1.6、2〜5でした。SARS-CoV-2のR0の現在の推定は、2.2(95%CI、1.4〜3.9)です。

・SARSおよびMERSと同様に、院内感染は感染拡大において重要な役割を果たしており、感染した医療従事者の29%と入院患者の12%の原因が院内感染だったと最近の研究で推定されています。

妊婦に対するCOVID19の注意点

・急速に出現、拡大する新興感染症は私たちの公衆衛生や医療インフラに重大な影響を及ぼす可能性がありますが、その準備および対応計画には妊婦に関する固有の対策が必要となります。以前の発生では、胎児の安全性に対する懸念から、臨床医は妊婦への治療または予防接種に消極的なこともありましたが、重症感染症に伴う重篤な状況では、救命のための処置を妨げるべきではありません(特段の理由がない限り)。

妊娠中のCOVID19感染の重症化リスク

・データは限られていますが、他の重度のコロナウイルス感染症(SARSまたはMERS)において、妊娠中の女性がより感染しやすいという証拠はありません。また、この新型コロナウイルス感染症では、女性よりはるかに多くの男性が感染しています。

・SARSおよびMERSに関する以前のデータでは、妊娠中の臨床所見は症状のないものから重篤や死亡まで様々な範囲となります。 COVID-19の最も一般的な症状は発熱と咳であり、入院患者の80%以上がこれらの症状を呈しています。

・Chenらによる最近の研究では、9人の女性がCOVID-19と診断されました。

全員が妊娠後期の感染で、臨床症状は妊娠していない成人で見られるものと類似しており、発熱7名、咳4名、筋肉痛3名、喉の痛みと倦怠感はそれぞれ2名でした。また5名にリンパ球減少症が認められました。全員が肺炎の診断でしたが、機械的換気を必要とした症例も死亡例もありませんでした。すべての患者が帝王切開を受け、アプガースコアは1分値8-9点、5分値9-10点でした。

・次に、Zhuらによって報告された9名の妊婦と10名の乳児(1組の双子を含む)の報告によると、症状の発症は分娩前(1-6日)が4名、分娩当日が2名、分娩後(1〜3日)が3名でした。COVID-19の症状は、非妊娠患者で見られた症状と類似していました。 9名の中で、胎児機能不全が6名に認められ、7名は帝王切開を受け、6名は早産となりました。

・これらの情報を総合的に鑑みると、COVID-19に感染した妊婦において重篤な症状を来たしやすいかどうかははっきりしていません。

妊娠中の女性の旅行に関する注意点

・現在、妊婦を含むすべての人が中国に旅行するべきではないと考えられており、2020年2月2日に米国国務省は、旅行勧告を最高レベルの4にアップグレードしました。

・産科医療提供者は、すべての患者に対して詳細な旅行歴を聴取し、

特に過去14日間に広範囲にSARS-CoV-2の感染が流行している地域への旅行歴を把握することが推奨されています。

妊娠中の予防接種について

・現在、COVID-19を予防するワクチンはありません。 2020年1月10日にオンラインでSARS-CoV-2のウイルス遺伝子配列が提供されて以来、複数の組織(国立衛生研究所を含む)は、COVID-19ワクチンの迅速な開発に取り組んでいます。このワクチンの開発は、SARSワクチンとMERSワクチンの開発に基づいており、その恩恵を受けています。しかし、安全で効果的なワクチンがどれだけ早く入手可能になるかは不明です。

感染制御対策と検査について

・妊婦を含むすべての患者は、発熱と呼吸器感染症の徴候および症状について評価する必要があります。理想的には、分娩室または妊婦健診先の医療機関に到着する前にスクリーニングを実施します。たとえば、次回受診予約をとるときに、もし予約日に呼吸器症状があった場合の対処法を伝えておく、または患者が受診前に相談してきた場合には呼吸器症状を電話で評価するべきです。

・呼吸器症状のある患者は、待機中の他の患者から隔離し、フェイスマスクを着用する必要があります。検査対象者の基準を満たす患者は、すぐに空気感染隔離室(陰圧の個室)に入らなければなりません。隔離後は、患者のフェイスマスクは外すことができます。医療従事者は標準的、接触および空気感染の予防策を遵守する必要があります。

妊娠中のCOVID19陽性患者の管理について

・妊娠中のCOVID-19の管理の原則は、早期隔離、厳重な感染制御対策、酸素投与、過剰な輸液の回避、エンピリックな抗生物質投与(二次的な細菌感染予防)、SARS-CoV-2および他の感染源の検査、胎児および子宮収縮モニタリング、進行性呼吸不全に対する早期の人工呼吸、個別の分娩計画(帝王切開による分娩の終結等)、および専門性の高いチームによる加療などです。

・胎児の心拍数パターンの変化は、母体呼吸器の悪化の初期徴候である可能性があります。 SARSおよびMERSの経験に基づいて、妊娠中の女性では重度の呼吸不全が発生する可能性があり、最も重篤なケースでは、適切な酸素化をサポートするのに機械的換気では不十分な場合があります。その際には、少数の文献により、妊娠中の体外式膜型人工肺(ECMO)が有用かもしれないと報告しています。ECMOの使用は、実施経験がある高次施設でのみ検討されるべきです。

・分娩(妊娠の終了)が重篤な母親に利益をもたらすかどうかは不明です。分娩に関する決定は、胎児の在胎期間を考慮し、新生児科医と一緒に行われるべきです。

・COVID-19の治療のために米国食品医薬品局(FDA)によって承認された抗ウイルス薬は現在ありませんが、動物モデルに使用されたMERSに対する広域スペクトル抗ウイルス薬は、SARS-CoV-2に対する有効性を評価中です。コロナウイルス関連肺炎の治療のためのコルチコステロイドは、MERSに有益であることが示されておらず、MERS-CoVの排出遅延につながる可能性があるため、他の適応症が存在しない限り投与は避けるべきです。したがって、胎児の肺成熟を期待して投与されるコルチコステロイドの使用は、感染症の専門家と母体胎児医学の専門家に相談し検討するべきでしょう。

・今後、COVID-19の妊婦に関する追加データが利用可能になった場合、すべてのガイダンスは改訂を検討されるべきです。

COVID19陽性母体から出生した児の管理について

・現時点では、SARS-CoV-2が母親から子宮内の胎児へ移行するかどうかは不明です。現在の不十分な情報である状況を考えると、出産時にCOVID-19を持つ母親から生まれた新生児は、子宮内または分娩前後のいずれかに感染した可能性があるため、他の新生児への曝露を避けるために隔離する必要があると考えるのが妥当と思われます。

・健康な乳児の理想的な環境は健康な母親と同じ部屋にいることですが、パンデミックH1N1で推奨されていたように、病気の母親と乳児を一時的に分離することは賢明です。 COVID-19が母乳を介して感染するかどうかは不明です。さらなるデータが利用可能になるまで、母乳で育てるつもりで、母乳を搾り出すのに十分な母親はそうするよう奨励されるべきです。ただし、感染性なくなったと判断された場合に、母乳育児を開始することができると考えられるでしょう。母子分離の期間の参考となるデータはありません。

*翻訳は現時点での暫定的な情報を元に作成されています。またセカンドチェックを行っていない1次翻訳の状態です。本記事の利用については、各施設および個人の臨床医の判断と責任下で利用してください。

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テーマの著者 Anders Norén