原文:2019-nCoV感染の疑いがある患者または感染が確認された患者をケアする医療従事者の感染予防および管理に関するQ&A 2020/2/16付
Q. 2019-nCoV感染疑いまたは感染が確定している患者に接する医療従事者に、ブーツ、不浸透性の医療用エプロン、つなぎ服は標準的なPPE(個人防護衣)として必要ですか?
A. いいえ。2019-nCoVによる急性呼吸器疾患が疑われるまたは確認された患者をケアする医療従事者に対するWHOの現在のガイドラインでは、すべての医療従事者と患者に適用される標準予防策(スタンダード・プリコーション)に加え、接触感染と飛沫感染の予防策を推奨しています。PPEに関しては、接触感染および飛沫感染の予防策として、手を保護するための使い捨て手袋の着用、衣服を汚染から保護するための清潔で非滅菌の長袖ガウン、鼻と口を保護するための医療用マスク、目の保護具(ゴーグル、フェイスシールド)を2019-nCoVによる急性呼吸器疾患疑いまたは確認された患者の病室に入る際に使用します。N95マスクのような呼吸器防護具は、エアロゾールが発生するような処置の際のみに必要です。nCoVの疑いまたは確認された患者をケアする医療従事者向けのより詳しい情報は以下。
Q. 医療用マスクは消毒して再利用してもよいですか?
A. いいえ。医療用のフェイスマスクは1回のみの使用を目的としています。使用後は、適切な方法で外し(マスクの前面に触れず、耳にかけるゴムや紐の部分を後ろから引いて外す)、すぐに蓋つきのゴミ箱に捨てて手指衛生を行います。nCoVのアウトブレイク発生場所でのマスク使用に関するより詳しい情報は以下。
Q. WHOは、nCoVが疑われるまたは確認された患者をケアする医療従事者に対し、なぜ接触感染と飛沫感染の予防を推奨する一方で空気感染の予防を推奨していないのですか?
A. WHOは、2019-nCoVの感染様式に関する現在利用可能なエビデンスを考慮した国際的な専門家のコンセンサスに基づいて、迅速ガイダンスを策定しました。現時点でのエビデンスによれば、ウイルスの伝播は飛沫および汚染された器具の表面への接触で起こり、空気感染を支持するものはありません。他のウイルス性呼吸器感染症で示されているように、空気感染はエアロゾルが発生するような処置(例:気管挿管、気管支鏡)で起こり得ます。よって、WHOはこれらの処置にのみ空気感染の予防を推奨しています。医療従事者向けの2019-nCoV予防策のより詳しい情報は以下。
Q. 2019-nCoVのアウトブレイクに際し、WHOは健康な人への医療用マスク着用を推奨していますか?
A. いいえ。現時点で地域において無症状の人(呼吸器症状の無い人)の医療用マスク着用が2019-nCoVの伝播を防ぐというエビデンスはないため、WHOとして推奨はしていません。地域においてマスク着用が推奨されるのは、症状を有する方です。マスクの誤った使用や過剰な使用により、マスクの在庫不足、本当に必要な人がマスクを使用できなくなるなどの深刻な事態が起こり得るのです。
Q. 2019-nCoV感染疑いの人と感染が確認された人を同室にコホーティングする(1か所に集める)ことは可能ですか?
A. 理想的には、2019-nCoV急性呼吸器感染症が疑われる人、確認された人は個室に隔離して管理すべきです。しかし、難しい場合(例:個室の数が限られている)にはコホーティングもオプションとして許容されるでしょう。2019-nCoV疑いの患者については、実際には別の呼吸器感染症に罹患していることも考えられるため、2019-nCoV感染が確認された患者とは別室にコホーティングしなければなりません。コホーティングの際にも、ベッドの間隔は最低でも1m以上空けましょう。
Q. 2019-nCoV感染が疑われる人、確認された人は、軽症でも入院させる必要があるのですか?
A. いいえ。微熱、咳、倦怠感、鼻漏、咽頭痛などの症状のある人で、呼吸促迫、呼吸困難、痰や血痰の増加などの呼吸器症状および吐き気、嘔吐、下痢などの消化器症状の増加を伴わず、精神状態の変化を認めない場合は、急な増悪の懸念が無い限り入院させる必要はないかもしれません。退院、帰宅させるすべての患者に対して、症状が悪化したらすぐに受診するよう説明しておきましょう。入院に関する詳細な基準は以下。
軽症の2019-nCoV患者を自宅でケアする場合のより詳細な情報は以下。
Q. 2019-nCoV感染が疑われる人、確認された人で入院が必要な場合、専門の病院または紹介病院での入院が必要ですか?
A. いいえ。現在のWHOの推奨では、2019-nCoV急性呼吸器感染症が疑われるか確認された患者について専門の病院または紹介病院に限るとはしていません。しかし、他の臨床的な理由(例:二次救命措置が可能かどうか)で、患者にとってより安全にケアができそうだと判断した場合には、国または地域の管轄において、そのような病院(専門病院または紹介病院)を選ぶ場合もあります。いずれにしても、2019-nCoV感染の疑いがある患者または確認された患者を持つ患者を治療する医療施設は、患者、スタッフ、および訪問者を保護するために、WHOの感染予防および管理の推奨を遵守する必要があります。
Q. 2019-nCoV感染が疑われる人、確認された人を収容する医療施設や家庭では、清掃時にどのような消毒薬が推奨されますか?
A. 2019-nCoV感染が疑われる人または確認された患者を収容する医療施設または家庭の環境清掃では、2019-nCoVや他のコロナウイルスなどのエンベロープウイルスに対して活性のある消毒剤を使用する必要があります。 一般的に使用されている病院の消毒剤を含む多くの消毒剤があり、エンベロープウイルスに対して有効です。 現在、WHOの推奨事項には次の使用が含まれています。
・再利用する機器の使用間に機器を消毒する70%エチルアルコール
・家庭や医療施設で頻回に触れるものの表面を消毒するための0.5%(5000ppm相当)次亜塩素酸
重篤な急性呼吸器感染を有し、nCoV感染が疑われる場合の診療マネジメントのガイダンス
nCoV感染が疑われる場合の医療施設における感染予防・管理に関するガイダンス
環境清掃に関するより詳細な情報は以下
https://www.cdc.gov/hai/pdfs/resource-limited/environmental-cleaning-508.pdf
Q. 乾燥している表面で、2019‐nCoVはどれくらいの間生存できますか?
A. 現時点で2019‐nCoVについての有効なデータはありません。SARSやMERSに関する実験ベースのデータから、環境におけるウイルスの安定性は、相対温度、湿度、表面の性質に依存することが分かっています。WHOでは2019‐nCoVの関連情報収集を継続し、エビデンスが利用可能となり次第更新していきます。
Q. 2019-nCoV感染が疑われる人または確認された人の廃棄物に特別な取り扱いは必要でしょうか?
A. いいえ。2019-nCoV感染が疑われる人または確認された人の医療施設や家庭での廃棄物については、感染性廃棄物として処理してください。感染性廃棄物の処理に関する詳細な情報は以下。
https://www.who.int/water_sanitation_health/publications/safe-management-of-waste-summary/en/
CDCのウェブサイトにも掲載あり。
https://www.cdc.gov/hai/pdfs/resource-limited/environmental-cleaning-508.pdf
Q. 2019-nCoV感染症で死亡した患者の遺体の管理に特別な手順はありますか?
A. いいえ。2019-nCoVで死亡した患者の遺体管理に特別な手順はありません。当局および医療施設は、感染症で死亡した患者の死後管理の指針となる既存の方針や規則に沿って進めるべきです。
Q. 隔離病棟とその種類、製品、健康要件を設定するためのモデルはありますか?
A. 隔離病棟設置のためのモデルは現在策定中です。nCoV患者をケアする医療従事者向けのPPEの仕様は、以下の「疾患用品パッケージ」に記載されています。
https://www.who.int/publications-detail/disease-commodity-package—novel-coronavirus-(ncov)
Q. nCoVに対する手指衛生や汚染防止目的での塩素の使用について、何か推奨はありますか?
A. アルコールベースの手指消毒剤または石鹸が無い場合、弱い塩素溶液(0.05%)を使用して手指消毒ができます。しかし、アルコールベースの手指消毒剤または石鹸と水が使用できる場合、弱い塩素溶液は溶液の作成と希釈時の手への刺激や健康への悪影響のリスクが高いため推奨されません。さらに、塩素溶液は毎日作り、涼しく乾燥した場所に日光を遮る蓋をして保管しなければ、消毒薬としての効力を失ってしまいます。塩素は、石鹸と水による洗浄の前に、環境清掃の際の汚染防止(0.5%濃度で使用)として有効です。
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