原文: https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/hcp/guidance-risk-assesment-hcp.html
翻訳日:2020年2月23日
II.曝露リスクカテゴリの定義
2019-nCoVの感染経路として、呼吸器分泌物以外の体液との関係については明らかにされていません。しかし、血液、便、嘔吐物、尿など、他の体液との保護されていない接触も、医療従事者を2019-nCoVへの感染リスクにさらす可能性があると見なされるべきです。
リスクを決定する際に、考慮すべき要素には次のようなものが含まれます:曝露期間(例、曝露時間が長くなると曝露リスクが増加する可能性があります)、患者の臨床症状(例、咳により曝露リスクが増加する可能性があります)、患者がフェイスマスク(呼吸分泌物が他人や環境を汚染するのを効率的にブロックします)を着用しているかどうか、エアロゾルを生成する手技が実行されたかどうか、および医療従事者に使用されたPPEのタイプ。
ただし、2019-nCoVの感染リスクに関するデータは現在不完全であり、現在のリスク決定の正確性は限られています。
表1に、リスク評価の参考に使用できるシナリオを示します。これらのシナリオは、すべての潜在的な曝露シナリオを網羅しているわけではなく、臨床的判断または個別の公衆衛生管理を目的とした個々のリスク評価に、取って代わるべきではありません。個人またはグループの動きを制限したり、特定のモニタリング要件を課したりする公衆衛生上の決定は、個人またはグループのリスクの評価に基づいている必要があります。医療施設は、公衆衛生当局と協議しながら、この手引きで概説した概念を臨床的判断とともに使用し、リスクを決定し、労働制限の必要性を判断する必要があります。
この手引きにおいて、リスクの高い曝露とは、医療従事者の鼻や口がCOVID-19を引き起こすウイルスに感染している可能性のある物質に曝露する形で、マスクをしていない2019-nCoV感染患者との長時間にわたる密接な接触を指します。医療従事者が自分の目・鼻・口を保護していない状態で、2019-nCoV感染の患者に対してエアロゾルを生成する手技を行うために病室にいた、もしくは呼吸器分泌物の制御が不十分である可能性が高い際に病室に居合わせることもリスクが高いと考えられます(例、心肺蘇生、気管挿管、抜管、気管支鏡、ネブライザー療法、喀痰検体採取)。
中リスクの曝露には一般に、医療従事者をの鼻や口がCOVID-19を引き起こすウイルスに感染している可能性のある物質に曝露されるような形で、マスクをしている2019-nCoV感染患者に長時間にわたり密な接触をしたことが含まれます。実施した医療行為のタイプによっては低リスクの曝露も中リスクと判断される場合があります。例えば、ガウン、手袋、ゴーグル、マスク(呼吸器用保護マスクではなく)を着用し、エアロゾル生成手技を行った場合は、中リスクと考えられます。エアロゾル生成手技を行っていないのであれば、低リスクと考えられます。その他の例については、表1を参照してください。
低リスクは一般に、医療従事者がマスクまたは呼吸器用保護マスクをし、2019-nCoV感染患者との短時間の接触もしくは感染源制御のためマスクを着用している患者との長時間の密な接触を指します。マスクまたは呼吸器用保護マスクに加えてゴーグルも着用すれば、曝露リスクはさらに低くなります。
推奨されるすべてのPPEなど、現在勧告されている感染制御規則を適切に遵守することで、2019-nCoVに感染した患者と長時間にわたって密に接触する医療従事者を守ることができます。ただし、PPEの使用または感染制御規則の遵守が徹底されなかったために曝露したものの、それを認識していない可能性があるため、医療従事者は監督を委任する自己モニタリングを行う必要があります。
患者との直接の接触がなく、アクティブな患者管理エリアに入らない、日常の安全措置を遵守している医療従事者は2019-nCoVへの曝露のリスクがあるとは見なされません(すなわち、同定可能なリスクなしとなります)。
現在、本手引きは、2019-nCoV感染が確認された患者に医療環境で曝露した可能性のある医療従事者に適用することを意図しています。ただし、医療従事者の曝露には、通常、テストを待っているPUIも含まれることがあります。PUIのテスト結果が48〜72時間以内に戻らないと予想される場合、この手引きで説明されているモニタリングと労働の制限の実施がPUIに曝露された医療従事者に適用できます。PUIに曝露された医療従事者の記録は維持する必要があり、テスト結果を待つ間に医療従事者が自己モニタリングを実行することが推奨されます。結果が72時間以上遅れる場合、または患者が2019-nCoVに陽性である場合、この文書に記載されているすべてのモニタリングと労働制限に従う必要があります。
表1:2019年(2019-nCoV)感染患者または医療環境での分泌物/排泄物に曝露された無症候の医療従事者の疫学的リスク分類1、および関連するモニタリングと労働制限の推奨事項
高リスクや中リスクの曝露に該当する場合、感染症を発症するリスクが低リスクに該当する場合よりも高くなります。したがって、積極的なモニタリングと労働制限の推奨事項は、どちらの曝露についても同じになります。ただし、これらのリスクカテゴリは、リスクの高い曝露に特定の検疫と旅行の制限について解説している旅行関連またはコミュニティの環境における2019年の新型コロナウイルス(2019-nCoV)潜在曝露者のリスク評価と公衆衛生管理に関する米国暫定手引きに記載されているリスクカテゴリに合わせて作成されました。ここで定義される医療従事者に適用される移動、公共活動、旅行制限に関する情報については同暫定手引きを参照してください。
各自に適用される曝露リスク曝露カテゴリは最も高いものを使用し、モニタリングと労働制限を管理する必要があります。
注:呼吸器用保護マスクの防護レベルはマスクよりも高く、2019-nCoV感染の患者を治療する際に着用することが推奨されていますが、マスクでもある程度防護できます。そのため、リスク評価にマスクが組み込まれています。
A.(目・鼻・口を保護せずに)医療従事者が、2019-nCoV感染の患者に対してエアロゾルを生成するもしく呼吸分泌の制御が不十分である可能性が高い(例、心肺蘇生、気管挿管、抜管、気管支鏡、ネブライザー療法、喀痰検体採取)手技を行ったもしくは病室に居合わせた医療従事者
・高リスク
・積極的モニタリング
・最終の曝露後14日間は出勤不能
B. 医療従事者がエアロゾルを生成するもしく呼吸分泌の制御が不十分である可能性が高い(例、心肺蘇生、気管挿管、抜管、気管支鏡、ネブライザー療法、喀痰検体採取)手技を行ったもしくは病室に居合わせた医療従事者でガウンと手袋を使っていない場合
注:医療従事者の目・鼻・は口も保護されていない場合、上記の高リスクカテゴリに分類されます。
・中リスク
・積極的モニタリング
・最終の曝露後14日間は出勤不能
C.(目・鼻・口を保護せずに)2医療従事者がマスクを着用していない患者と長期にわたって密接に接触している場合。。
注:保護マスクは、マスクよりも高いレベルの感染防御を提供します。ただし、このシナリオでは、(たとえ保護マスクやマスクを着用した場合でも)マスクを着用していない患者と長時間密接に接触している間、目が覆われないままであるため、これらは同じグループになっています。
・中リスク
・積極的モニタリング
・最終の曝露後14日間は出勤不能
D.(目・鼻・口を保護せずに)2医療従事者がマスクを着用している患者と長期にわたって密接に接触している場合。
・中リスク
・積極的モニタリング
・最終の曝露後14日間は出勤不能
E.(手袋を着用していない)医療従事者が患者の分泌物/排泄物と直接接触しており、医療従事者が即時の手指衛生を実施できなかった場合。
注:医療従事者が接触直後に手指衛生を実施した場合、これは低リスクとみなされます。
・中リスク
・積極的モニタリング
・最終の曝露後14日間は出勤不能
F. マスクまたは保護マスクを着用している医療従事者でマスクを着用している患者長期にわたって密接な接触があった場合に限る
注:保護マスクは、マスクよりも高いレベルの保護を提供します。ただし、このシナリオでは、患者が感染限の管理のためにマスクを着用していたため、同じ低リスクとして分類されています。
・低リスク
・監督を委任した自己モニタリング
・出勤制限なし
G. 患者のケアもしくは分泌物/排泄物との接触中に、推奨されるすべてPPE(保護マスク、目の保護具、手袋、ガウン)を使用した医療従事者
・低リスク
・監督を委任した自己モニタリング
・出勤制限なし
H. 医療従事者(推奨されるすべてのPPEを使用していない)が、マスクを着用している/していない患者との短い接触がある(短時間の接触の例には、トリアージデスクでマスクを着用していない患者との短い会話;患者またはその分泌物/排泄物と直接接触することなく病室に短時間入室すること;患者が退院後すぐに病室に入室することがある)
・低リスク
・監督を委任した自己モニタリング
・出勤制限なし
I. 患者のそばを歩く医療従事者、または患者またはその分泌物/排泄物と直接接触せず病室に入らない医療従事者
・低リスク
・監督を委任した自己モニタリング
・出勤制限なし
HCP=医療従事者
PPE =個人用保護具
1 この文書での高リスクと中リスクの曝露の区別は人工的です。なぜなら、双方が医療従事者が感染をするリスクがあり、積極的なモニタリングと労働制限の推奨事項どちらの曝露でも同じだからです。ただし、これらのリスクカテゴリは、旅行関連またはコミュニティの環境における2019年の新型コロナウイルス(2019-nCoV)潜在曝露者のリスク評価と公衆衛生管理に関する暫定米国手引きに記載されているリスクカテゴリに合わせて作成されました。手引きは、高リスクの曝露に特定の検疫および旅行制限の基準の概要を示しています。この手引きではリスクの高い曝露に特定の検疫と旅行の制限について解説しています。ここで定義される医療従事者に適用される移動、公共活動、旅行制限に関する情報の暫定手引きを参照してください。
2 この手引きでは、「保護されていない」とは、特定の身体部分にPPEを着用しないことを意味します。たとえば、保護されていない目・鼻・口は、医療従事者が目の保護とマスクまたは保護マスクを着用していないことを意味します。保護マスクはマスクよりも高いレベルの保護を付与し、2019-nCoVの患者のケアには推奨されますが、マスクは依然として医療従事者にある程度の保護を提供します。これは、我々のリスクの評価において考慮されています。
*翻訳は現時点での暫定的な情報を元に作成されています。本記事の利用については、各施設および個人の臨床医の判断と責任下で利用してください。